JR札幌病院
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診療トピックス

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外耳道真珠腫

※ページ内に、手術中の画像などあります。気分の悪くなる方は閲覧をお控えください。

手術が必要な外耳・中耳疾患(番外編)

1.外耳道真珠腫の成因、特徴、問題点(説明文)

  1. 外耳道真珠腫は外耳道に角化 耳垢 の堆積を伴う疾患ですが感染が加わり骨にも炎症が及ぶと、外耳道に露出する骨面の拡大や陥凹を生じます。
  2. 放置すると外耳道の自浄作用が損なわれ、炎症は長引きこの悪循環により病態は進行していきます。加えて外耳道病巣のクリーニング処置に疼痛を伴うことも多くなります。
  3. さらに放置すると、中耳に進展したり、ひいては側頭骨深部や周囲組織にも炎症が波及してしまう場合もあります。
  4. 背景因子に、加齢、糖尿病、人工透析、骨粗鬆症、ステロイドや免疫抑制剤の継続服用、などが高頻度に存在します。
  5. 外耳道真珠腫の背景因子(基礎疾患)は簡単に解消されないため、以下の問題があります。
    1. 保存治療により一旦改善した外耳道真珠腫が再燃する可能性がある。
    2. 高齢の方では,通院治療への体力的負担が年々増加する。

1.外耳道真珠腫の成因

小括1- 外耳道真珠腫発症機序まとめ

これまでの解析結果と考察より外耳道真珠腫の発症機序をまとめますと、外耳道は皮膚と骨表面の骨膜及び骨から組織されておりますが、「耳垢が堆積しやすい環境」や「皮膚機能の低下」があると古くなった角質が耳垢となり蓄積していきやがて局所の炎症を起こします。

さらに土台となる骨が脆弱であると容易に炎症が深部に波及し、骨は腐骨化し皮膚上皮は深部に侵入して耳垢を作り外耳道真珠腫が形成されるという機序が考えられました。

外耳道真珠腫患者さんの年齢構成

これまで手術治療を行った外耳道真珠腫は225耳です。
年齢は7~95歳、平均66.9歳、中央値72歳、
扱った全症例の75%が60歳以上でした

症例数は年々増加傾向

患者さんは年々増加傾向にあり、コロナ窩では一旦減少しましたが、その後また増加してきております。

背景因子

扱った患者さんのの63%に基礎疾患があり、背景となる疾患を多い順に並べると骨粗鬆症が多いことがわかりました。

治療の原則

  • 感染した外耳道皮膚や腐骨を除去
  • 正常外耳道との境界を平坦化し、自浄作用のある外耳道を形成する。

2-1:保存的治療

頻回の清拭、抗生剤・抗真菌剤軟膏塗布

2-2:手術治療

(全身麻酔で行います。全経過を通して痛みはありません)

  1. 経外耳道的操作+皮下組織被覆
    堆積耳垢、ドリルで腐骨除去、正常骨を露出・平坦化し、骨面を皮下組織等で覆う(主に内視鏡使用)。
  2. 耳後切開からの外耳道形成術
    耳後切開にて外耳道皮膚を外耳道骨壁から剥離挙上し、骨部の腐骨を十分に除去、外耳道を平坦化して、皮膚と骨の間に血流豊富な皮下組織を敷き詰めて厚みを作る。
  3. 鼓室形成術
    中耳腔や乳突蜂巣に進展した場合に、②の手術と併用する。

症例を提示します

治療法2-1:保存的治療

症例 64歳
背景因子 糖尿病
  • 外来クリーニング(耳垢や腐骨除去、抗生剤付き軟膏、抗真菌軟膏塗布)を 週2回から開始し、その後は2週間毎~1カ月毎で継続。
  • 疼痛を伴うため、治療開始頃は局所麻酔の前処置後にクリーニングを施行。

治療法2-2-①

症例 45歳
手術 耳内操作による腐骨除去+皮下組織被覆

治療法2-2-②

症例 35歳
背景因子 長期ステロイド服用、外耳道弯曲
手術 耳後切開から行う腐骨処理+外耳道形成術

治療法2-2-②

症例 85歳
背景因子 糖尿病、末梢循環不全
手術 耳後切開から行う腐骨処理+外耳道形成術

治療法2-2-③

症例1 76歳 左耳
背景因子 人工透析、骨粗鬆症、外耳道下壁・中耳腔・乳突蜂巣広範浸潤、感染耳漏(++)
手術 外耳道形成術+鼓室形成術

 

2-2-④

症例2 72歳
背景因子 骨粗鬆症
外耳道下壁・乳突蜂巣広範浸潤、顔面神経周囲浸潤、感染耳漏(+)
手術 外耳道形成術+鼓室形成術

まとめ

  1. 扱った外耳道真珠腫患者さんの75%は60歳以上の方でした。
  2. 扱った患者さんの約2/3に骨粗鬆症、糖尿病、ステロイド治療、人工透析、などの基礎疾患がありました。
  3. 治療法は、病態の重症度、患者さんの年齢、基礎疾患の有無を加味して,保存的治療や手術治療を選択します。
  4. 特に高齢の患者さんでは、年を経るにつれ体力的・環境的に外来通院が難しくなる可能性を考慮して、手術による根治治療を選択しています。
  5. 入院期間や外来体制は、鼓室形成術と同様です。