特徴・特色
低侵襲(体に負担の少ない)外科治療
近年、外科治療とりわけ外科手術療法においては、できるだけ機能を温存し体に負担の少ない治療、つまりは低侵襲治療が注目を浴び普及してきています。以下に当科で施行しています低侵襲治療についてご紹介します。
(1)腹腔鏡手術
当科では、胃癌、大腸癌には積極的に腹腔鏡手術を施行しております(癌進行度、状況によっては腹腔鏡手術を選択しない場合もあります)。腹腔鏡手術とは、お腹に1cm程度の穴を5個程度あけ、その穴を通してカメラや各種手術機器をお腹の中に挿入し病巣部を切除します。そして4cm程度の小切開をお腹に開け、切除部をお腹の外に取り出す手術方法です。この手術方法は従来のお腹を大きく切る手術(開腹手術)と比較し手術の創(きず)が小さいので整容性に優れている(見た目が綺麗)ばかりでなく、術後の痛みが少なく、術後翌日から歩行可能であり、入院期間の短縮化および早期社会復帰に寄与します。また、本手術法ではお腹の中をカメラにて拡大視しますので、微小血管などのお腹の中の詳細を確認でき、より安全に手術が可能となります。再発率や生存率に関しても開腹手術と遜色ないとの報告が多く、現在大規模な臨床試験が進行中であります。
当科では、癌疾患以外でも、胆嚢結石症、急性虫垂炎、ヘルニア、腸閉塞などにも腹腔鏡手術を採用しており、小さな創(きず)で痛みが少なく、短期間での入院治療という低侵襲治療を行っております。
(2)痔核(いぼ痔)を切らずに治す『ALTA(アルタ)注射』
従来、痔核(いぼ痔)に対する手術療法としては、痔核そのものを切除する結紮(けっさつ)手術が行われてきました。2005年3月より痔核(いぼ痔)を切らずに治す新しい治療『ALTA(アルタ)注射療法』が日本国内で認可、開始されました。これは、痔核にアルタ注射を投与して痔に流れ込む血流の量を減らし、痔を硬くして粘膜に癒着・固定させる治療法で、当科でも本療法を施行しております。この治療法では、切らずに痔核を治せるので、術後の痛みが少なく、術後出血の危険も少ないため入院期間も短く、また、治療費も抑えることが可能となります。痔核の全例がこのアルタ注射の治療適応になるわけではありませんが、従来の結紮切除による手術療法とアルタ注射療法を組み合わせることによっても、術後の痛みを大幅に抑えることが可能です。本治療法は、どこの病院でも施行できるわけではなく、日本大腸肛門病学会に所属し認定された医師のみが施行可能な治療法です。当院外科スタッフは本療法の施行資格・技術を有しておりますので、痔核でお困りの方は、当院外科へご相談ください。
以上、今回は2つの低侵襲外科治療をご紹介いたしました。今後とも安全性や有効性を確認しつつ、より良い医療を提供できるよう努力を続けていきたいと思っております。外科領域の疾患でお悩みの方は、ぜひJR札幌病院外科を受診ください。
診療内容の概要
消化器(食道、胃、大腸、直腸、肝臓、胆道系、膵臓)の悪性疾患(癌など)や良性疾患(腸閉そく、胆石、急性虫垂炎など)、痔、乳腺、甲状腺、鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)にたいする手術を行っています。