呼吸器内科
原発性肺がん
JR札幌病院では、最新のEBM(医学的根拠)に基づいて、呼吸器内科、呼吸器外科、連携する放射線治療科がチームで、患者さんの病態に適した「個別化医療」に取り組んでいます。
- 監 修
- JR札幌病院 院長
呼吸器内科 四十坊 典晴先生
「肺がん」の基礎知識
1.肺がんの疫学
日本人のがんによる死亡は1998年に肺がんが胃がんを抜いて第1位となって以来、年々増加し2019年のデータでは75,394人が亡くなっています。また2020年の肺がん罹患数(新たに肺がんと診断される患者数)予測では、13万人が肺がんに罹患すると予測されされています。
2.肺がんの原因
肺がんは、肺細胞の遺伝子に傷がつき変異することで起こります。肺細胞の遺伝子変異の原因は、環境因子や生活因子など様々ですが、一番の原因は喫煙です。非喫煙者と喫煙者の肺がんの発生リスクは、国立がん研究センターの発表によれば、男性は4.4倍、女性は2.8倍です。
3.肺がんの分類
肺がんは組織型として、小細胞肺がんと非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん)などに大別されます。
組織分類 | 特徴 | |
---|---|---|
小細胞肺がん
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非小細胞 肺がん |
腺がん | 肺野部に発生し胸部レントゲン検査で発見しやすいがんです。肺がんの中で最も発生頻度が高く(肺がんの約60%)、非喫煙者の女性にも多いがんとされています。 |
扁平上皮 がん |
喫煙との関連深いがんで、男性に多く、肺門部に多い傾向にありますが、肺野部に発生することもあります。 | |
大細胞 がん |
発生頻度は低いですが、肺野部に発生し、進行が早いがんとされています。 |
4.肺がんの症状
肺がんの原発巣が、肺の中心部の太い気管支に発生する肺門部のがんと、肺野と呼ばれる肺の末梢に発生する肺野部のがんかによって症状は異なります。
- 肺門部の肺がんは、早い時期から咳、痰などの気管支の刺激症状や、血痰などの症状がみられます。
- 肺野部の肺がんは、早期には自覚症状がないというのが特徴です。定期的に胸部レントゲン検査を受けることが大切です。
JR札幌病院が取り組む「肺がん」診療
- 健康診断などのレントゲン検査で肺に異常陰影が認められた場合
- 二週間以上続くせきや、痰に血が混じるなどの症状がある場合には呼吸器内科を受診してください。
検査・診断
- 肺がんの疑いがあるかを精査するためにCT検査を行います。
- CT検査で肺がんの疑いがあると判断された場合には、確定診断のために病変部の組織や細胞を採取する、
気管支鏡検査などを行います。 - 採取した組織や細胞は病理検査を行い、がん細胞の組織型や、バイオマーカー検査で、
がん細胞の遺伝子変異(ドライバー遺伝子) などを精査します。肺がん治療における「個別化医療」
- 転移等の精査
- 造影CT検査やPET-CT検査でリンパ節転移や周辺臓器等への転移を確認
- 頭部MRI検査により脳への転移を確認
- 骨シンチグラフィー検査により骨転移の確認
ステージ(臨床病期)分類と主な治療法
小細胞肺がん | 限局型 |
|
手術+薬物療法 +放射線治療 |
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進展型 | 「限局型」の範囲を超えてがんが広がっている | 薬物療法 |
非小細胞肺がん | ステージⅠ | がんが肺の中にとどまり、リンパ節や他の臓器に転移がない | 手術+放射線治療 |
---|---|---|---|
ステージⅡ | 原発巣のがんは肺内にとどまり、同側の肺門リンパ節に転移はあるが、他の臓器には転移がない | 手術+薬物療法 | |
ステージⅢ |
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手術+ 化学放射線治療 |
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ステージⅣ | 原発巣の他に、肺、脳、肝臓、骨等に転移(遠隔転移)がある | 薬物療法 |
治療
肺がんの治療は、ステージ(臨床病期)、患者さんの身体状況や年齢、肺がんの種類(組織型)、肺がんの遺伝子変異(ドライバー遺伝子)、患者さんの希望等を考慮したうえで、外科的治療(手術)、放射線治療、薬物療法を組み合わせて集学的に行います。
- 外科的治療(手術)
- 手術の方法には、開胸手術と胸腔鏡下手術(VATS)があります。当院では、患者さんの手術侵襲(負担)の軽減と、一日も早い社会復帰をめざして、胸腔鏡下手術(VATS)を第一に検討しています。
- 薬物療法
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- 従来の細胞障害性抗がん剤に加えて、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤が開発された事により治療成績(生命予後)が向上しています。
- 治療にあたっては、患者さんの生活や仕事と両立できるよう、外来での実施(外来化学療法)を基本としています。
- 放射線治療
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- 肺がんの根治目的として外部照射を行いますが、患者さん の病態によっては、定位照射や粒子線治療も行っています。
- がんによる痛みや、がんによって引き起こされている症状 の緩和等の目的で放射線治療を行うことがあります。
検査・治療件数(2019年1月1日~12月31日)
- 原発性肺がんに対する胸腔鏡下手術 (VATS)47例
- 薬物療法(化学放射線療法も含む)1,378例
- 肺生検(TBLB)121件
- 悪性腫瘍遺伝子検査58件
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